エビは死んでから数時間すると赤くなってしまいます。死後、アスタキサンチンという赤い色素が表面化するからです。
しかし、ミナミヌマエビが死ぬ前から赤くなっていたり、死後数時間経たずに赤くなっている場合、アンモニア中毒や、急激な水質、水温の変化による死因が考えられます。
- ミナミヌマエビが赤くなって死んでしまった理由
- ミナミヌマエビの宿敵【アンモニア】が増える3つの原因と対処法
- その他ミナミヌマエビに多い死因
- ミナミヌマエビの飼育トラブルに関するよくある質問
ミナミヌマエビが赤くなって死んでしまった理由
ミナミヌマエビが赤くなり、死んでしまった理由のほとんどは、以下のような飼育環境の悪化です。
①アンモニア中毒症状
ミナミヌマエビは、水槽内のアンモニア濃度が高まることでアンモニア中毒症状を引き起こし、赤くなってしまいます。
これは、ミナミヌマエビ体内で発生するたんぱく質変化によるもので、こうなると既に瀕死状態であり、助かることはありません。
ミナミヌマエビの体内で起こるたんぱく質変化についてはこちらに詳しく記載しています→ミナミヌマエビを赤くする体内でのたんぱく質変化とは何ですか?
ミナミヌマエビの身体が赤くなり死んでしまう最大の原因はこのアンモニア中毒によるものです。
ミナミヌマエビにとって、アンモニアは宿敵なんですね
②水質・水温の急激な変化
ミナミヌマエビは、急激な水質や水温の変化に弱く、細胞が過敏に反応することで赤くなることがあります。
変化に耐え切れず過敏反応した細胞は、懐死して赤くなり、やがて赤色範囲は身体全体にひろがり、この場合も最終的にミナミヌマエビが助かることはありません。
③死骸を放置
亡くなったミナミヌマエビの死骸をそのまま放置していると、やがて腐敗による体内たんぱく質の変化によって身体が赤くなっていきます。
水槽内の水質悪化につながる恐れがありますので、速やかに水槽から取出してあげましょう。
①②の場合、生きている状態で身体が赤く変化したミナミヌマエビの回復は難しく、まず間違いなく助かりません。
残念ですが、③の場合同様に速やかに水槽から取り出してあげましょう。
ミナミヌマエビの宿敵【アンモニア】が増える3つの原因と対処法
前章で説明した通り、ミナミヌマエビが赤くなり、死んでしまう最大の理由はアンモニア濃度上昇が引き起こす中毒症状です。
こちらでは、ミナミヌマエビの宿敵【アンモニア】が増える3つの原因と対処法についてまとめています。
ミナミヌマエビの致命傷となるアンモニア量についてはこちらに記載しています→致命傷となるアンモニア量はどの程度ですか?
①phの上昇(アルカリ化)
一般的に水槽内のphは7以下に抑えておくことが理想とされていて、phが7.3(アルカリ性)を超えたあたりからアンモニアが急激に増加すると言われています。
このように、水槽内のphが上昇してしまった場合、以下の対処法でphを下げて下さい。
- phを下げるアイテムを使う
- phを上げるアイテムを使わない
phを下げるアイテムを使う
生体への負担を考慮し、自然にpHを下げながら、飼育環境にも大きな影響を与えないおすすめ3選です。
ソイルはpHを下げる効果が高く、底床として敷くと水質が弱酸性に傾きます。また、水質水草の根張りなどが良いなど、水草が育ちやすい様々な効果も期待できます。
マジックリーフに含まれるフミン酸の効果でpH低下が期待できます。
水が茶色に色付きますが、生体などには影響はありませんので心配無用です。
流木に含まれている腐食酸にはpHを下げる効果があります。
水槽内のおしゃれなレイアウトとしてもおすすめです。
phを上げるアイテを使わない
底床には、phを引き上げる特性がある大磯砂などの砂利やサンゴ砂などの使用を控えて下さい。
また、鉱物成分が溶け出しph上昇につながりますので、レイアウトに岩などを用いることもやめましょう。
急激なph低下は厳禁!
ただし、急激なph低下はミナミヌマエビのphショックにつながりますので注意して下さい。
上記のようなphを下げるアイテムを使用する場合は、必ず試験紙や試薬を用いて少しずつ水質状態を確認しながら、あせらず、少しずつph調整に取組んで下さい。
②水温の上昇
水温の上昇も、水槽内のアンモニア増加に大きな影響を与えます。
近年の猛暑などを考慮すると、特に夏場の水温上昇にはもっとも注意が必要になりますので定期的な水温チェックが大事になります。
- 室内温度管理
- 水槽用冷却ファンの設置
- エアレーションの強化
室内温度の管理
水温の上昇は、ずばり室内温度の上昇にもっとも影響を受けます。
夏場は、適宜ルームエアコンを活用し、室内温度が30℃以内になるように注意して下さい。
水槽用冷却ファンの設置
専用の水槽用冷却ファンを設置できるとかなり安心です。
最近は比較的お手軽価格で購入できる物も多くなりましたので、大切なミナミヌマエビを夏の猛暑から守ってあげるためにもぜひ購入を検討下さい。
冷却ファンを使用すると、水分蒸発も早まりますので、こまめな足し水を心がけましょう
エアレーションの強化
エアレーションは、水槽内の上下の水の入れ替えを促進するだけでなく、水泡がはじける際に多少なりとも水温を逃がすことから水温を下げる効果が期待できます。
また、冷却ファンとのあわせ技でさらに冷却効果があがるはずです。
水槽内への氷投入は厳禁!
水槽内へ氷や、凍ったペットボトルの投入は絶対にやめましょう。
急激な温度変化はミナミヌマエビに大きな負担をかけることになり、生命を危険にさらしてしまうことになりかねません。
特に夏場は大変ですが、手間を惜しまず、丁寧な水温管理を心がけましょう。
水温の上昇は体力低下に影響
水温の上昇は、アンモニア濃度の上昇だけでなく、ミナミヌマエビの体力低下にも直接影響します。
そもそも、エビは高温に弱く、水温30℃以上は耐えられません。
③アンモニア分解バクテリアの不足
水槽内のアンモニアを分解してくれるバクテリア不足も、アンモニア濃度上昇へ大きく影響します。
水槽内に生育するバクテリアは2種類
そもそも水槽内には大きく分けて2種類のバクテリアが生育しています。
1種類目は、エサの食べ残しや、生体のフンなどの有機物を分解し、有害なアンモニアを生成するバクテリアです。(正式には“従属栄養細菌”と言いますが、ここではバクテリアAと呼びます)
2種類目は、生成されたアンモニアをエサとして亜硝酸、硝酸塩という成分へと分解するバクテリアです。(こちらは、“独立栄養細菌”と言いますが、ここではバクテリアBと呼びます)
この他にも水槽内ではたくさんのバクテリアの働きのおかげで、最初のエサの食べ残しや、生体のフンなどは、どんどん形を変えていき、最終的には水草や、植物プランクトンの栄養として吸収されてしましいます。
バクテリアBは繁殖能力が低い
ところが、アンモニアを分解してくれるバクテリアBは、アンモニアを生成するバクテリアAに比べて、繁殖に時間がかかります。
特に、水槽立上げ初期では、バクテリアAが生成した有害なアンモニアを十分に分解できるだけのバクテリアBが育っておらず、生成された有害なアンモニアがどんどん溜まってしまうことが多いのです。
ちなみに、ミナミヌマエビが赤くなり死んでしまうのは、購入した数日以内という方が結構多いようです
そこで、特にバクテリアBが十分に育っていない飼育初期には、以下の対処法で乗り切って下さい。
- 飼育数を抑える
- エサの量を抑える
- 死骸はすぐに取出す
ポイントは、バクテリアAにバクテリアBの分解処理能力以上のアンモニアをいかに生成させないか、です。
つまり、バクテリアAのエサとなる有機物をいかに少なく抑えるか、が重要になります。
その他ミナミヌマエビに多い死因
アンモニア中毒以外にもミナミヌマエビに多い死因についてまとめてみました。
水質の悪化
ミナミヌマエビは、メダカや一般的な熱帯魚などに比べて水質の悪化にとても弱く、常に死因の上位にあがります。
水質が悪化する主な原因は、ろ過不足、水替え不足、エサの与えすぎ、過密飼育などです。
- ろ過装置、エアレーションの設置、増設
- 適度な水替え ※要注意!
- エサの適正提供
- 水槽サイズにあった適正飼育
水替えについては、一度に大量の水を変えるとミナミヌマエビに負荷がかかってしまう恐れがありますので、必ず少量ずつ、こまめな水替えを心がけましょう。
水替えは、1~2週間に1回、水槽の3分の1程度の程度替えるのが目安です
水槽内の酸素不足による酸欠
夏場になると水温が上昇することで水槽内の酸素が不足し、ミナミヌマエビが酸欠で死んでしまうことがよくありますが、現認は以下の通りです。
・水槽内の溶存酸素(水中にある酸素量)低下
・ミナミヌマエビの動きが活発になることによる必要酸素量の増加
・結果、飼育数に変化がなくても酸素不足が発生し、ミナミヌマエビが酸欠状態に陥る
このような、水槽内の酸素不足を防ぐには、エアレーション活用や、ろ過装置による飼育水の循環が効果的です。
殺虫剤(ベープ)の使用
夏場には、蚊の対策としてお馴染みのベープですが、これはミナミヌマエビにとって大敵となります。
販売メーカーからも公式サイトにて下記のような注意喚起が出ています。
なお、殺虫剤の成分が少しでも水槽内へ混入してしまうとミナミヌマエビは直ちに全滅してしまうので、ベープなど殺虫剤の家庭内での使用は厳禁です。
この場合、蚊への対策は、物理的攻撃(手でパチンっ
)か冷却型スプレーでの撃退がおすすめです!農薬が付着した水草使用
ミナミヌマエビは、農薬を含む薬品類にとても敏感です。農薬が付着した水草を水槽内へ入れてしまうと、弱ってしまうか、最悪は死んでしまうこともありますので、水草を購入する際は、必ず無農薬の水草を購入して下さい。
国産に対し、輸入品はかなりの確率で農薬付きのものが多いので特に注意が必要です!
ミナミヌマエビの飼育トラブルに関するよくある質問
そのほか、ミナミヌマエビの飼育トラブルに関してよくある質問をまとめてみました。
脱皮に失敗するとどうなりますか?
エビは脱皮を繰り返して大きくなりますが、脱皮に失敗してしまうことがあります。
うまく脱皮で触覚や眼、脚などの欠損で脱皮の途中で力尽き、最悪の場合には死んでしまうこともあります。
これらの原因は、水槽内の水質の悪化や、急変などが考えれますが、栄養不足も大きな原因の一つです。
エビの脱皮が失敗しないように、日頃の水質管理はもちろんですが、健康的な身体を維持するためにも栄養バランスのとれたエサを与えてあげましょう。
エビに必要な栄養素がバランスよく入った専用のエサを与えると効果的です
カラだ赤くなったミナミヌマエビの体内で起こるたんぱく質変化とは何ですか?
ミナミヌマエビをはじめとする甲殻類の身体にはアスタキサンチンと呼ばれる物質が存在します。
このアスタキサンチンは本来、赤色をしているのですが、エビの体内ではたんぱく質と結合しているため、灰色っぽい色をしています(これが、普段見ているミナミヌマエビの色です)
ところが、アンモニア濃度が高くなりすぎると、アスタキサンチンはたんぱく質と分離してしまい、本来の赤色に戻り、ミナミヌマエビの身体が赤く見えるようになるのです。
この反応は、ミナミヌマエビが高温状態になった場合にも現れます。
エビやカニを茹でると、身体が赤くなるのは、このたんぱく質変化が理由です
健康でも赤くなることはありますか?
ミナミヌマエビは周りの飼育環境への適応過程(いわゆる擬態)によっても体色を赤く変化させることがあります。
擬態を起こしやすい状況としては、赤系色の水草や、底砂を使用している場合や、体色を赤くするような成分が含まれているエサを与えている場合です。
擬態により赤くなったミナミヌマエビは健康で、ツマツマとエサをついばんだり、水槽内を元気に動き回っていますので、状態をよく見てあげれば違いは簡単にわかるはずです。
YouTubeなどでは、意図的に赤色のミナミヌマエビの繁殖に挑戦する動画などもあります
致命傷となるアンモニア量はどの程度ですか?
エビにとって致命傷となる総アンモニア量は、1ℓあたり3㎎です。
3mg以下でも有害なレベルですので、この状態が長く続くとエビの生体に悪影響を及ぼしますので、直ちに水質改善を実施して下さい。
混泳に向かない魚は?
基本的に、ミナミヌマエビは多くの熱帯魚との混泳OKです。
ただ、ミナミヌマエビが食べられたりしないように、攻撃性の強い熱帯魚との混泳は避けたほうが良いでしょう。
- ベタ
- アベニーパファー
- ラミレジィ
- その他、大型熱帯魚
赤くなったミナミヌマエビを発見したらすぐに飼育環境の見直しを!
こちらの記事では、ミナミヌマエビが赤くなり死んでしまう理由や、その対処法などについて紹介しました。
ミナミヌマエビが赤くなり死んでしまう理由のほとんどは、アンモニア中毒や、水質、水温の急激な変化や、悪化など飼育環境の悪化が原因です。
赤くなったミナミヌマエビを見かけたら、元気に泳ぐ他のミナミヌマエビを守る為にも、すぐに飼育環境を見直しましょう!
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