ミナミヌマエビが、お腹や足を頻繁にパタパタと動かす行動にはいくつかの理由が考えられます。
同じリズムで足をパタパタ、ビョンビョン、ギュルギュルと定期的に動かしているだけなのであれば問題はなく、自然な行動と言えます。
しかし、水槽内を狂ったように異常に泳ぎ回る行動を伴っている場合は水が合わず苦しんでいる可能性があります。
- ミナミヌマエビがお腹をパタパタする4つの理由
- ミナミヌマエビがphショックを起こす原因と対処法
- ミナミヌマエビの飼育に関するよくある質問
ちなみに、オスのみがぐるぐる旋回したり、元気に泳ぎまわる行動は「抱卵の舞」というメスを求めてオスが一斉に泳ぎだす求愛行動の可能性があり、その場合は何も心配することはありません
「抱卵の舞」についてはこちらで紹介しています→「抱卵の舞」と呼ばれる求愛行動でオスもパタパタ
ミナミヌマエビがお腹をパタパタする4つの理由
ミナミヌマエビがするお腹パタパタには大きく分けて、日常的なパタパタと、脱皮中のパタパタと、抱卵した卵を守るためのパタパタと、緊急事態のパタパタの4つがあります。
①身の回りの水質維持のための日常的なお腹パタパタ
②脱皮のためのお腹パタパタ
③抱卵した卵を守るためのお腹パタパタ
④水温、水質があわず、パニックを起こしている時の全身パタパタ
それぞれについて詳しく紹介していきます。
①身の回りの水質維持のための日常的なお腹パタパタ
そもそもエビは水質や水温の急激な変化・悪化に弱い生き物で、常に自分の身の回り水質を綺麗な状態に保っておく必要があります。
そのような理由から、ミナミヌマエビはお腹や足を頻繁にパタパタさせ、身の回りの水が澱まないよう、綺麗で新鮮な水を身体中に送り続けているのです。
また、パタパタ行動の他にも、お腹を抱えるようにギューッと身体を丸めてツマツマする様子などもよく見られますが、これは身体に付着した汚れなどを一生懸命に取り除いているようです。
エビがちょこちょこと足を動かし、身体の掃除をしたり、エサをついばむ“ツマツマ”はとても愛らしく、その様子がYouTube動画などで多数投稿されています!
このようなミナミヌマエビの行動に対して、人間目線で『エビは綺麗好き!』などと表現されることもありますが、エビにとっては、快適に生きていくための日常的な行動なのです。
②脱皮のためのお腹パタパタ
エビは、成長する過程で幾度も脱皮を繰り返して大きくなっていきますが、この脱皮時期にも、お腹をパタパタする、という行動がよく見られます。
お腹や足をパタパタさせ、その反動を利用することで、古い殻を脱ぎ捨てているのです。
このような適正な成長過程での脱皮であれば問題ありません。
ミナミヌマエビの適性な脱皮頻度
ミナミヌマエビの脱皮頻度は、成長段階によって異なります。生まれたばかりの稚エビの時期は成長スピードも早くなり、脱皮頻度も高まりますが、成熟し大人になれば成長スピードは落ち着き脱皮頻度も低くなります。
- 稚エビ(子供):2日に1回程度
- 成熟(大人):10日に1回程度
- 晩年:1か月に1回程度
適性頻度以上の脱皮は要注意!
ミナミヌマエビは、急激な水質や水温などの環境変化に適応する場合にも脱皮をしますが、このような環境の急変に対応するための脱皮は、ミナミヌマエビにとって決して良いことではありません。
なぜなら、適正頻度以上の脱皮はミナミヌマエビの身体に大きな負担をかけてしまうからです。
ミナミヌマエビの脱皮が多すぎるかも?と感じたら、水質、水温の状態に問題がないか確認して下さい。
準備不足(エネルギー不足)の状態で脱皮を迎えてしまうと脱皮不全によって死んでしまうリスクもあります
③抱卵した卵を守るためのお腹パタパタ
ミナミヌマエビのメスは抱卵すると卵を守るためにお腹をパタパタします。
エビの卵はとても栄養価の高い有機物で、水質が悪く、細菌などが多い環境などではすぐにカビてしまいます。
大切な卵がカビてしまわないよう、新鮮で綺麗な水や空気を送り続けるために、抱卵前にも増して頻繁にパタパタするのです。
この行動はミナミヌマエビに限らず、ヤマトヌマエビなど他のエビでも同様に行われます。
ヤマトヌマエビの卵や母エビの行動についてはこちらで詳しく説明しています→ヤマトヌマエビの卵や母エビの行動についてよくある質問
メスのお腹パタパタは抱卵前兆の可能性もあり
ミナミヌマエビのメスがするお腹パタパタは抱卵前兆の可能性だと考えられる理由は以下の2つです。
・抱卵前になると卵を抱える腹肢を足で頻繁にパタパタ掃除するようになる(卵をお腹に抱える準備)
・抱卵前のメスは繁殖前の準備として脱皮をする(脱皮に伴いオスを引き寄せるフェロモンを放出)
「抱卵の舞」と呼ばれる求愛行動でオスもパタパタ
抱卵前のメスが繁殖の準備として脱皮をする際に放出するフェロモンに引き寄せられ、オスがメスを追いかけるように泳ぎ回りながらパタパタする様子を「抱卵の舞」と言います。
メスを求める求愛行動として水槽内のオス達が一斉に泳ぎ回る様子は、まさに舞を踊っているようで圧巻です!
④緊急事態の全身パタパタ
ミナミヌマエビは、phショックと呼ばれる症状になると、パニックを起こし、水槽内を狂ったように泳ぎ回ったり、異常に全身パタパタとさせたりします。
このようなパニック状態は、ミナミヌマエビとっては緊急事態なのですが、pHショックに対する有効な治療方はなく、ヤマトヌマエビが自力で回復してくれるのを祈るしかないのです。 元の水槽に戻すという対処をとる事もできますが、必ずしも回復するとは限りません。
ミナミヌマエビのパニック状態の映像は、再生10分過ぎに見られます↓
ミナミヌマエビをphショックから守る3つの対処法
phショック状態になってしまうと有効な治療法はないので、ミナミヌマエビがphショックになることを未然に防ぐための飼育対応が重要です。
こちらでは、ミナミヌマエビをphショックから守るための3つの対処法についてまとめていきます。
1.ミナミヌマエビ投入時の水合わせを必ず行う
2.水替えの頻度、交換量の目安を守る
3.定期的な水質管理を行う
それぞれ詳しく紹介します。
1.ミナミヌマエビ投入時の水合わせを必ず行う
買ってきたばかりの熱帯魚や観賞魚、エビなどを水槽に入れる前に行う「水合わせ」作業は、水槽の水質環境に慣れさせることで、魚やエビたちに環境変化による負担、ストレスをかけないための大事な事前準備です。
この事前準備を怠ると、せっかく購入したミナミヌマエビが水槽投入後1週間くらいかけてポツポツと死んでしまったり、ひどい時には投入当日に全滅してしまう、というような悲劇が起こることがあります。
購入したミナミヌマエビをphショックから守るためにも、水槽合流前の「水合わせ」は必ず行って下さい
水合わせは決して難しい作業ではなく、正しい手順さえ知っていれば誰でも簡単に行えます。
初心者でも簡単に出来る水合わせの手順は以下の通りです。
- 購入したミナミヌマエビを袋のまま、飼育予定の水槽に浮かべる
- 水槽内の水温とphを測定し、購入した袋内の水と差がないかを確認する
- 2を確認した上で、1時間程度たったらミナミヌマエビを袋から飼育用の水槽へ移してあげる
購入したミナミヌマエビが元気に泳ぎ回る姿や、エサをツマツマする様子をすぐにでも見たい!という気持ちはよく分かりますが、大切なミナミヌマエビをphショックから守ってあげることのほうが大事ですよね。
2.水替えの頻度、交換量の目安を守る
水槽内の水質を適切な状態に維持する為の水換えはとても大事ですが、やり方には注意が必要です。
必要頻度以上の水替えや、1回での大量水交換は急激な水質変化につながり、ミナミヌマエビがショック状態を起こす恐れがあります。
水替えは大事ですが、必ず適正な頻度、交換量の目安を守ったうえで行うようにして下さい。
- 水替え頻度の目安は、1~2週間に1回程度
- 1回の水替え量の目安は、水槽の1/3~1/5程度
3.定期的な水質管理を行う
水槽内の水質悪化はphショックを引き起こす大きな原因となりますので、水槽内の水質管理を必ず定期的に行うようにして下さい。
水替え頻度と同じタイミング、1~2週間に1回を目安に水質管理を行って下さい
試験薬などを利用したこまめな水質チェックを実施するだけでミナミヌマエビのphショック症状に陥るリスクを大幅に減らすことが出来ます。
ミナミヌマエビの飼育に関するよくある質問
ミナミヌマエビは、とても飼いやすく、初心者の方でも安心して飼育できるおすすめのエビです。
こちらでは、初心者にも役立つ、飼育に関するよくある質問についてまとめてみました。
水槽大きさと飼育数の目安
水槽内の飼育環境を維持するためにも、適切な大きさの水槽を用意することは大切です。
以下が、一般的な水槽の大きさに対する飼育数の目安となります。
水槽のサイズ: | 30㎝(25ℓ) | 60㎝(60ℓ) | 90㎝(166ℓ) |
ミナミヌマエビ飼育数: | 15匹程度 | 30匹程度 | 60匹程度 |
あくまでも、目安ですので、個体の大きさなど、実際の飼育環境に応じて飼育数や水槽サイズを調整して下さい。
おすすめの水草は?
水質の安定や、ミナミヌマエビのストレス軽減、繁殖などを考えると、ミナミヌマエビの飼育に水草は必要不可欠です。
数ある水草の中でも、特に「ウィローモス」はミナミヌマエビと大変、相性が良いおすすめの水草です。
低光量でもたくましく育つうえ、成長速度も速いことから、エビの苦手な硝酸塩対策にも効果を発揮します。
農薬が付着した水草は危険ですので、購入する際は必ず無農薬の水草を選んでください
エサは何をあげれば良い?
ミナミヌマエビは、水槽内に自然発生する、コケや植物性プランクトンなどをツマツマと食べているので基本、エサを必要としていません。
メダカや他の熱帯魚などと混泳させる場合などは特に、エサの食べ残しや、フン、水草なども非常食として活躍しますのでエサを与えなくても、餓死することはまずありません。
ただし、ミナミヌマエビの繁殖を考えている場合は、栄養満点のエビ専用エサを与えることで、ミナミヌマエビも繁殖力がアップしますので上手く活用して下さい。
エサは、1日に1回程度で、2時間以内に食べきれる量を目安にして下さい
ヌマエビのエサとして定番人気↓
粒は小さく、少数飼育に最適↓
繁殖は簡単にできますか?
ミナミヌマエビの繫殖は、初心者でも比較的・簡単に行えます。
ミナミヌマエビの繫殖のポイントは以下の通りです。
- 水温の管理:最適な水温は20℃~24℃
- 底砂に「ソイル」使用:水質の安定と稚エビのエサとなる微生物の生成
- 水草の投入:稚エビの隠れ家として必須 ※『ウィローモス』が最適
- 混泳禁止:生まれたばかりの稚エビは恰好の餌食に…
飼育環境を適切に維持していれば、ミナミヌマエビの繁殖はとても簡単ですが、同じエビ類でも、ヤマトヌマエビの繁殖には少しコツが必要になります。
ヤマトヌマエビの繁殖などについては、こちらの記事で詳しく説明しています→ヤマトヌマエビの卵は放置しても孵化するが、環境を整えなければすぐに死んでしまう!
飼育の注意事項!
ミナミヌマエビは、とても飼いやすい生き物ですが、反面、水質や水温の変化や悪化にとても弱くもあります。
ミナミヌマエビを安全に飼育するために、以下の点に注意して下さい。
- 水質の管理→特に、phの上昇(アルカリ化)は水質悪化に影響大!
- 水温の管理→水温上昇は水槽内の酸素不足による酸欠に!
- 室内の環境→殺虫剤(ベープなど)の家庭内使用は厳禁! …など
こちらの記事では、ミナミヌマエビがお腹や足をパタパタする理由について紹介しました。
飼育者がミナミヌマエビをよく観察し4つのパタパタの違いを見極める事が重要
ミナミヌマエビがお腹をパタパタするのは、大きく分けて4つの理由があります。
もう1度、確認したい項目がある方は、青字のリンクをタップして下さい。(記事内の読みたい場所へジャンプします)
①身の回りの水質維持のための日常的なお腹パタパタ
②脱皮のためのお腹パタパタ
③抱卵した卵を守るためのお腹パタパタ
④緊急事態の全身パタパタ
また、ミナミヌマエビの飼育に関するよくある質問も紹介しました。
もう1度確認した項目がある方は、青字のリンクをタップして下さい。(記事内の読みたい場所へジャンプします)
・水槽大きさと飼育数の目安
・おすすめの水草は?
・エサは何をあげれば良い?
・繁殖は簡単にできますか?
・飼育の注意事項!
ミナミヌマエビは飼いやすい反面、水質の悪化や水温の変化にとても弱いので、日常的に水質管理をしてあげて下さい。
特に、アンモニア濃度上昇が引き起こす中毒症状には注意が必要です。
こちらの記事では、ミナミヌマエビのアンモニア中毒について詳しく解説しています。
ミナミヌマエビがお腹をパタパタするほとんどは自然な行動で問題ありませんが、緊急事態のサインとなることもあります。飼育者として我が子同然のミナミヌマエビ達の様子を普段からしっかり確認してあげましょう。
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